2016年08月31日

ふるさと怪談トークライブのこと

 あの日のあの時間、私は台所で何かを家事をしていた、のだと思います。
 揺れを感じ、おやと思う間もなく、家全体が揺すぶられ始めました。とっさに脳裏に浮かんだのが、阪神・淡路大震災で経験した、あの揺れ。考えるより先に体が動き、携帯電話だけを握って玄関を出て、ドアの外で揺れが収まるのを待ちました。室内から響いてくる、何かが倒れ、割れる音を、うんざりしながら聞いていたのを今でもよく覚えてきます。

 東日本大震災は、私が人生で直接経験した二度目の大きな地震でした。そして、実際に訪れたことのある街の無残な姿を見ることになったのも、知人が被災者となったのも、二度目でした。
 だから、思ったのです。今回は、前回の後悔を繰り返さないようにしよう、と。
 
 阪神・淡路大震災の時、まだ社会人一年生だった私は与えられた仕事をこなすのに精一杯で、ボランティアにもろくに協力できないまま、ただただ指を咥えて見ていました。苦い記憶です。
 あれから二十年近く経ち、さすがに今回はできることがあるはずと考え、初期ボランティア活動のお手伝いには私なりに参加していましたが、そんな時、東雅夫さんが東北の出版社 荒蝦夷の支援活動をするとTwitterで宣言したのを見ました。これだ、と思いました。

 以来、本年に至るまで、全国各地で開催されたふるさと怪談トークライブの事務局として活動してきました。震災の発生から丸五年が経ち、開催頻度は少なくなってきています。ふるさと怪談トークライブは100%のチャリティ、つまりイベントで得た収益金はすべて寄付金に当てるというシステムを取っている以上、こちらから開催を呼びかけることをしないのも一因でしょう。現地で主催してくださる方の負担が大きいため、積極的に開催を働きかける性質のイベントとは考えていないからです。ですが、それでもいい、うちでやりたいと手を挙げてくだされば、どこへでも参ります。これからも、ずっとそうです。
 
 震災のチャリティで、なぜ「怪談」なのか。
 その点についても、答えは明確だと思います。怪談は、人智の及ばない出来事が起こる世界と折り合いをつけるための装置であり、歴史に名を残すことのない市井の人々の苦しみや悲しみを広くわかちあい、後世に伝えることができる文芸だからです。
 昔話にしても、怪談仕立てで災害の記憶を伝える物語が少なくありません。ポジティブな言葉はひとまずは耳に心地よく響きますが、そればかりだと無理が重なり、結局はより深い闇を産んでしまう温床になりかねません。ただただ太陽が照り続ければ、大地は滅びます。人の心も同じです。夜が来て、雨が降ればこそ、バランスが取れる。幽き気は、強い光の元では感じられない。そういうことなのだと思います。
 
ふるさと怪談トークライブ公式サイト http://hurusatokwaidan.web.fc2.com/

【写真】2016年5月21日に尾道・慈観寺本堂で開催された「ふるさと怪談 in 尾道」の様子
ふる怪尾道2016
posted by 門賀美央子 at 21:00| Comment(0) | こんな活動をしています。

2016年08月30日

『自分でつける戒名』 尊敬する松原日治上人について

自分でつける戒名

『自分でつける戒名』http://goo.gl/

 元々は代筆の形で出るはずが、監修者の松原日治上人のお取り計らいで初の単著となった思い出深い一冊です。
 松原日治(まつばら・にちじ)上人は、単立無宗派「平等山福祉寺」(https://sites.google.com/site/pingdengshanfuzhisi/)の開山上人であり、現在は奥之院住職に就任されています。
 平等山福祉寺とは、昭和49年に、松原上人がボランティアとともに、貧しい人や苦しい立場にいる人のために建てられた小さなお寺で、入会費一万円、そして年会費として千円を毎年お納めすれば、戒名をお布施なしで授けるという活動をしておられます。

 高額な戒名料や葬儀代をどうにかしたい。
 その思いの源になったのは、松原上人が目の当たりにした仏教界の体制に対する強い怒りでした。
 上人には身体障害者の弟さんがいらっしゃったそうです。しかし、家庭が貧しく、十分なことをしてあげられないまま早くに亡くなってしまいました。それだけでもつらい体験であるのに、早世した我が子のための戒名料や読経料の捻出に両親が苦しむ姿を見たのが上人の原点になったといいます。
 衆生の苦を救うはずの仏教が、なぜ新たな苦の源になるのか。
 僧はなぜそれを助長するのか。
 怒りから発した疑問はやがて自らの行き方を問う命題となり、最終的には葬式・戒名を無料で奉仕する僧侶になりたいと、自ら出家する道を選ばれました。
 こういう方ですので、発言は時にして過激で、また独特の活動スタイルから既存の仏教界からは白眼視され、陰口を叩かれることも少なからずあるようです。ですが、私がお見受けした限り、言葉の激しさとは裏腹に、あたたかく、裏表のない広い心をお持ちの素晴らしい方でした。これまで出会った僧侶の中でも、一、ニを争う人格者だと思っております。

 一般的な仏教界の理解では、戒名は師から授けられるもので、自分でつけるのでは無効ということになります。一方、偉大な僧の中には自分でつけた戒名(法名)を名乗った人も少なくありません。そもそも、戒名とは「私は仏の弟子として生きます」という心の証であり、金銭的なお布施を介してやり取りするようなものではないとも言えるでしょう。その辺り、本書をお読みいただければ実感していただけると思います。

 なお、松原上人の言葉を紹介するTwitterのアカウントもあります。こちらもぜひフォローしてみてください。 「松原日慈の言葉」@dissident_buddh
posted by 門賀美央子 at 21:00| Comment(0) | こんな本を書きました。

2016年08月29日

『史上最強 図解仏教入門』 企画、編集、執筆

史上最強図解仏教入門

史上最強図解仏教入門 http://www.natsume.co.jp/book/index.php?action=show&code=004904

 せっかく新しいブログになったので、古い仕事もご紹介していきたいと思います。

 この本の発売は2010年。もう6年も経ちましたが、お陰さまで好評をいただいて版を重ね、今も現役で書店の本棚に並ぶロングセラーになっています。
 ライターになってすぐぐらいの時期に請け負った仕事で、初めて企画から執筆まで一貫して担当させてもらいました。『ときめく妖怪図鑑』(http://www.yamakei.co.jp/products/2815202300.html)同様、一冊読めば仏教のおおよそがわかる、というところを目標に、教えはもちろん、歴史や民俗、各宗派の違いなど、コンパクトにまとめております。

 とはいえ、発売から結構時間が経ったこともあって、少々書き直したい部分もあったり。
 もし、仏教入門書をご計画の版元がありましたら、どうぞお声がけくださいませ。こっち方面は少々自信あり、でございます。
posted by 門賀美央子 at 21:00| Comment(0) | こんな本を書きました。